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叙々苑で大暴れ
「カゲオ、おまえ本当にゆる美のことは吹っ切れてんの?」
「吹っ切れてんの?」
ふっきれ・・・てんの・・・
見た目がインテリヤクザ風のインテリ先輩の言葉が頭の中でエコーがかかる。
おいおいおいおい?!祝いの席でなぁ~んつう質問してんだよ?!
目ん玉飛び出るぞっ!!!
驚きすぎて声を出すこともできないわたし。
だけど…衝撃が走ったのはココからでした。
「いやぁ~…ゆる美さんは…」
「やっぱり、正直タイプっすね~」
「あははははは!マジか?!、おまえ吹っ切れてないんじゃないの??」
「そぉ~っすね…オマエがいなけりゃなぁ・・・・」
酔いちくれ絶好調のカゲオが酒に溺れ切ったふにゃふにゃ顔でわたしのことをチラッと見る。
「あっはははははっ!なるほどね!オマエゆる美の方がまだ好きだけど、豆ちゃんがいるから行けないってことね!」
「そ~っすねぇぇぇぇ」
楽しそうに笑っているのはインテリ先輩とカゲオだけ。
周囲にいた友人達の顔はどんどん引き攣っていく。
「最低!!!!!!」
気付いたら、手に持っていたウーロン茶のグラスをカゲオの顔面めがけてぶっかけていた。
張本人とも言えるインテリ先輩はそんな光景さえもヒャッヒャッと楽しそうに笑っているのが目の端に映る。
ムカつく、ムカつく、ムカつく!
酒に酔っているとはいえ、言ってはならんことはあるだろう!
わたしは叙々苑の店内にあるトイレの個室に駆け込み、悔し涙をたくさん流していた。
頭の中はそうとうパニックで、その時その瞬間はカゲオのことが世界で一番大嫌いだった。
今更、ゆる美だと?!
そもそもオマエからわたしに言い寄ってきたんだろ?!
記憶喪失なの?!頭バカなの?!
「豆!!!大丈夫?!」
女友達がトイレまで追いかけて来てくれた。
「豆、開けて??顔見せて??」
優しく優しく声をかけてくれる。
でも、正直頭パニック中のわたしは「ごめん、開けたくない!」と泣きながら引きこもる選択をしていた。
とても上品な造りでオレンジ色に輝くシャンデリアのトイレの中で、子供のように泣き喚いていたのでした…。
「お酒飲んでる方が本音出やすいって言うじゃん!」
「もう結婚なんかしたくない!、あんなヤツいらない!」
「なんで今さら、ゆる美の名前なんか出てくるのーーーー???」
と…さんざんトイレの個室から友人達に向けて思いの丈を発散する。
もちろん、私がトイレで暴れている最中も他のお客さんは入って来ていたんだろうけど…そんな事どうでもよくなるくらい怒りの感情が抑えられなかった。
ときどき友人たちの「あ、すいみません」と小さく謝る声が聞こえてくるのはそういうことだろう。
今日来ているメンバーの中にはインテリ先輩の彼女も来ている。
彼女さんも見た目が怖くて…黒髪ロングで「姐さん!」と呼びたくなる雰囲気の人だった。
「ごめんねぇ~、豆ちゃん。インテリの奴が挑発しただけだから…カゲオくんも本音じゃないって。」
彼女さんも慰めてくれはするけど…マジ、あんたの彼氏どうにかしてくれ!と正直心の中では喚いていた。
だけど、彼女さんにそんな事を言っても仕方ない。
それに、インテリ先輩の彼女さんと私そんなに仲良くもないし、やっぱり怖いし。
とりあえず泣くだけ泣いて、喚くだけ喚いて少し落ち着いた頃にわたしは個室からようやく出ることにした。
友人達の顔を見ると、とても心配してくれているのが分かる。
背中をやさしく擦ってくれて、「あんな酷いこと言うのは許せないよね」と共感してくれた。
そして私もボソッと「妊娠してなかったら絶対別れてた」と呟いた。
▶▶▶浮気相手に生まれた子供は同学年#14へつづく