大嘘つきなカゲオと電話をした後。
暗い病室の天井を見上げながら今日起きた出来事を何度も何度も頭の中でリピートしていた。
許すと決めた以上、無駄な行為だと分かっているけど自分で再生することを止められない。
感情ってやっかいですね。
日付が変われば今まで通り、いつも通りの毎日を過ごしてやる。
ゆる美との一瞬のメールとのやり取りなんて、私とカゲオの人生にはなかったことにしてやるんだ。
それがいい、それでいい。
カゲオの告げた言葉が99.9、いや100%嘘だと分かっていたけど、0.0000001%を信じたい自分がいる。
わたしは、ある日の出来事を思い出していた。
それは私の妊娠が発覚し産婦人科で妊娠のお墨付きをもらった日のこと
仕事終わりのカゲオと待ち合わせをして、大好きな焼肉をお店で食べたあと。
キレイな月明りの夜、二人で引っ越しを決めて住み始めたばかりのご近所さん。
まだ歩きなれなくて思い入れもなくて、これから二人で作っていくんだろうな…なんて幸せな気持ちに浸っていた。
突然、カゲオが誰かに電話をかけ始めた。
私の妊娠報告を1番最初に告げた相手、カゲオが大好きなおばあちゃんだった。
カゲオが過去やらかして警察にお世話になったときに、保釈金を出してくれたおばぁちゃん。
カゲオなりに、迷惑をかけたこと心配をかけたことを心の中でずっとひきずっているんだろうな。
「もしもし?ばあちゃん。俺子供できたよ、ばぁちゃんに曽孫抱かせてやるからな。」
「うん、うん、ありがとう。今までたくさん迷惑かけてきたけど、俺頑張るから。見ててね、ばあちゃん」
時間にすると、とても短い電話だったと思う。
でも、電話が終わったあとのカゲオの表情が印象的だった。
とても力強い頼もしい男らしい表情に私には見えたんです。
私とカゲオの「幸せ」ってこれからは二人だけのもじゃないんだなって…。
家族なんだなって、うまく言葉にするのは難しいけど、そんなことを感じた夜でした。
だから、私はカゲオを信じたいの。
すぐ嘘吐いて、すぐ逆ギレして、自分に都合が悪いことは言いたがらず拗ねるカゲオを
受け入れると覚悟を決めたから。
だからどうしても信じ続けたかったんだよ…。